貨物軽自動車運送事業(軽貨物)とは?
そもそも軽貨物ってなんだろう?という方も多いのではないでしょうか?
ここでは基礎知識として「貨物軽自動車運送事業」とは何かを簡単に解説します。
貨物軽自動車運送事業とは
軽貨物ドライバーの仕事は、お客様から代金をいただいて、軽自動車を使って荷物を企業や個人に届ける事業です。
街中でよく見かける、黒いナンバープレートの車で配達している人を思い浮かべていただけると分かりやすいと思います。
また、軽自動車だけでなく、125cc以上のバイクでも軽貨物ドライバーとして働けます。この仕事は、軽自動車やバイクを使って有料で荷物を運ぶことを意味します。
軽貨物と一般貨物の違いとは?許可と届出の比較
一般貨物自動車運送事業と貨物軽自動車運送事業は、どちらも貨物を運ぶ事業ですが、いくつかの重要な違いがあります。
1. 営業許可の難易度
一般貨物自動車運送事業
事業を行うには「許可制」が適用されます。国土交通省に許可申請が必要です。
申請には、車両や運転手の条件、営業所の設置、経営の安定性など、細かい要件があり、審査が厳しくなります。これにより、営業を開始するまでのハードルが高くなります。
貨物軽自動車運送事業
一方で、この事業では「届出制」が採用されています。国土交通省に対して届出書を提出し、受理されることで営業を開始できます。
申請手続きが比較的簡単で、車両や運転手、営業所の設置についても一般貨物自動車運送事業に比べて要件が緩やかです。
2. 必要な手続きと準備
一般貨物自動車運送事業
営業許可を取得するためには、必要な書類や設備、業務計画などを整え、詳細な審査を受ける必要があります。申請手続きが複雑で時間がかかる場合があります。
貨物軽自動車運送事業
届出書を提出し、受理されればすぐに営業を開始できます。車両の準備さえ整えていれば、比較的短期間でスタートできるのがメリットです。
3. 車両と運行の違い
一般貨物自動車運送事業: 大型トラックなどの緑ナンバーの営業車両を使用します。
運行エリアや荷物の種類によって、さらに細かい規制があります。
貨物軽自動車運送事業軽自動車(軽バン、軽トラック)を使用します。荷物の種類や運行エリアに関する規制が少なく、比較的自由に運行できます。
一般貨物自動車運送事業は営業許可の取得が難しく、申請手続きが複雑ですが、より多くの貨物を取り扱えます。
一方、貨物軽自動車運送事業は届出制で、軽自動車を使用するため、手軽に始めやすいという特徴があります。それぞれの事業形態の特性を理解し、自分のビジネスに合った選択が重要です。
軽貨物ドライバーの開業手続きガイド:5つの手続きが必要
軽貨物ドライバーとして開業するためには、まず個人事業主として開業届を提出することからスタートします。次に営業ナンバー(黒ナンバー)を取得するため国土交通省への届出をする必要があります。
手続きは比較的シンプルですが、しっかりと理解しておくことでスムーズな開業が可能です。以下に、開業までの具体的な手順を詳しく解説します。
事前に準備しておくもの
- 車両
営業に使用する車両を準備します。
軽トラック・軽バン・2022年7月から軽乗用車も使用可能となりました。
- 保険の加入
自賠責保険、任意保険に加入しているか確認します。加入していない場合はこの段階で加入しておくとよいでしょう。
個人事業主として開業する
- 開業届の提出
開業する地域の管轄税務署に提出します。
郵送でも提出可能ですが、事業開始後1か月以内に提出する必要があります。
- 青色申告承認申請書の提出
青色申告承認申請書を開業届と同時に提出します。提出は開業届と同じ税務署で問題ありません。
青色申告を行うと、様々な税制優遇が受けられます。
最大65万円の所得控除、赤字を翌年以降に繰り越すことが可能になります。
事業開始から2か月以内に提出する必要があります。
軽貨物ドライバーとして事業者登録をする
軽貨物ドライバーとして事業を始めるためには、いくつかの書類を準備する必要があります。
主な書類は次の通りです。提出後に受け取る控えは今後も必要になります。
必ず保管しておきましょう。
- 軽貨物自動車運送事業経営届出書
- 事業用自動車等連絡書
- 運賃料金設定届出書
- 車検証
黒ナンバー(営業ナンバー)の取得
- 住民票
- 車検証の原本
- 印鑑
- 受理済の事業用自動車等連絡書の控え
- 事業に使う黄色ナンバーの軽貨物車もしくは黄色ナンバー本体(前後2枚)
- ナンバープレート発行料金(1,500円から2,000円程度)
インボイス制度へ加入
インボイス制度へ加入し、「適格請求書発行事業者の登録」を行います。登録を済ませれば取引先に適格請求書の発行ができます。管轄の税務署、または国税庁のe-taxから登録を行いましょう。
13桁以下の番号が課税事業者としての登録番号です。大切に保管しておきましょう。
インボイス制度についてはこちらの記事でくわしく解説しています。
開業時に必要な費用
車両費
車両を購入する場合には、購入費用が掛かります。すでに保有している軽自動車があれば車両費は不要です。
新車購入の場合、120万円から200万円がおおく、中古車は60万円から100万円程度がボリュームゾーンとなっています。
車検費用
軽自動車の場合、2年に一度の車検が必要です。
一般的に5万円から10万円程度の費用が掛かる場合があります。
業者や車両の状態、整備内容によって変わることがありますので、計画的に準備しましょう。
保険料
一般の任意保険料より高めの保険料に設定される傾向があります。
営業車両は事故のリスクが一般車両より高いと想定されるためです。
各保険会社、補償内容により異なりますが初年度は年間10万円から15万円が多いでしょう。
各種税金
軽自動車を所有する場合、毎年かかる税金があります。
代表的なものに自動車税があり、軽自動車の場合、年間1万2千円程度です。
また、新車購入時には自動車取得税がかかり、車両価格の約3%が目安です。
軽貨物ドライバーの仕事スタイル:一番多いのは業務委託契約
軽貨物ドライバーとして働くには、いくつかの異なるスタイルがあります。これらの働き方によって収入源や働き方が大きく変わりますので、自分に合ったスタイルを見つけることが重要です。
業務委託契約
配送業者や企業と契約を結び、その会社の業務を請け負います。
例えば、大手宅配会社と契約して毎日荷物を配達するケースが一般的です。
安定した収入を得やすい反面、契約先のルールに従って働く必要があるため、自由度は低めです。
月収は20万円から40万円程度が一般的で、仕事量や契約内容によって変動します。
直接契約
企業や個人と直接契約を結ぶ働き方です。
地元の中小企業や個人の依頼を受けて配送します。
自由に働く時間を選べる反面、営業や顧客対応も自分で行う必要があるため、高いビジネススキルが求められます。
収入は不安定になる可能性がありますが、成功すれば高収入を狙えます。月収は15万円から50万円以上が一般的です。
フリードライバー(ギグワーカー)
フリードライバーは、Uber Eatsなどのプラットフォームを通じて単発の仕事を受けるスタイルです。この働き方の魅力は、自分のスケジュールに合わせて仕事を選べる自由さにあります。
ただし、仕事が不定期であるため、収入が安定しないことがデメリットです。
月収は5万円から20万円程度で、働く時間やエリアによって大きく変わります。
軽貨物ドライバーの仕事内容3選
軽貨物ドライバーの仕事は、大きく分けて以下の3つに分類されます。それぞれの仕事には特徴があり、希望の働き方に合った選択が可能です。
1. 個人配達(宅配)
仕事内容: 主に個人宅へ荷物を配達する仕事です。最近ではネットショッピングの利用が増えているため、宅配の需要がとても高まっています。
取引先例: ヤマト運輸、日本郵政、佐川急便、Amazonなど、大手運送会社と契約することが一般的です。
特徴: 配達する荷物は比較的小さなものが多いですが、日々多くの荷物を扱うことになります。
時間指定の配達が多く、効率よく配達をこなすスキルが求められます。
2. 企業配達
仕事内容: 企業同士の間で荷物を配送する仕事です。たとえば、製品のサンプルを別の会社に届けたり、オフィス用品を運んだりします。
特徴: 企業との契約で定期的に配送する仕事が多く、毎月の収入が安定しやすいのがメリットです。
さらに、決まったルートを何度も走ることが多いので、仕事のペースを作りやすい点が特徴です。
3. スポット・チャーター便
仕事内容: 急な依頼や特別な配送に対応する仕事です。たとえば、緊急で必要な部品を運ぶことや、大型イベントでの物資配送などです。
特徴: 報酬が高めに設定されていますが、依頼が不定期なので、収入が安定しないのが難点。
初めての現場で臨機応変に対応できる力が求められます。
他の仕事とうまく組み合わせることで、より多くの収入を得られる可能性もあります。
開業のメリット・デメリット
メリット
起業のしやすさ
軽貨物ドライバーは、特別な資格や大規模な投資が不要であるため、誰でも比較的簡単に起業できます。
運送業界での経験がなくてもスタートでき、基本的な運転技術とサービス精神があれば、スムーズに業務を始められます。
需要が増加・安定的に仕事がある
ネットショッピングの急速な拡大に伴い、個人宅への配送ニーズは飛躍的に増加しています。
引用元:株式会社クニエ. “2030年までの宅配便配送能力を試算.” PR TIMESより抜粋
特に、日本国内のEC市場は年々成長しており、2023年には約20兆円に達すると予測されています。
このような背景から、宅配業務に従事するドライバーはこれからも高い需要が見込まれます。
具体的なデータを見ても、2018年から2024年にかけて宅配便取扱個数は大きく増加しています。
また、特に都市部においてはネットショッピングの利用率が高く、東京や大阪などの主要都市では、配送ニーズがさらに集中しています。
軽貨物ドライバーの仕事が途切れることは少なく、安定した収入を得やすい環境が整っています。
法人化・事業のスケールアップを狙える
軽貨物ドライバーとして起業した後、法人化や事業のスケールアップも視野に入ってきます。
法人化することで、信用力の向上や資金調達がしやすくなり、税務面でのメリットも得られます
。
また、事業が順調に進めば、車両やドライバーを追加して業務を拡大でき、新しいサービスや地域への展開も可能です。
これにより、ビジネスの成長を持続的に推進することができます。
デメリット
労働時間の長さ
特に個人配達や業務委託契約では、1日の労働時間が長くなる傾向があります。
多くの荷物を配達する必要があるため、早朝から深夜まで働くことが求められる場合もあります。
荷物が多いと、休憩時間が短くなることもあり、体力的な負担が大きくなる可能性があります。
収入の不安定さ
軽貨物ドライバーの収入は不安定になりがち。
日々の配送物量によって収入が大きく変動することがあります。
繁忙期には、例えば年末や大型セール時期に配送件数が急増し、収入が増えることがあります。
一方で、閑散期には配送依頼が減少し、物量が少なくなることで収入が減少します。
まとめ
ここまで軽貨物ドライバーとして開業するための基礎知識を解説してきました。
- 軽貨物とは
- 開業手続きの流れ
- 開業に必要な費用
- 軽貨物ドライバーの働きかた
ドライバーの需要が高まっている今だからこそチャンスがあります。
努力次第で得られる安定した収入は大きな魅力です。開業前の基礎知識をしっかりと押さえて、自信を持って第一歩を踏み出してください。